市内の心にいつも引っかっている事件
ある時のことです。
年貢米を蓄えておく倉庫が破られました。
その蔵の錠は市内の父の造ったものでした。
「お前の造った錠は、精巧(せいこう)で
普通の泥棒では壊されないはずだ。
犯人はその錠にくわしい者であろう。
お前以外には考えられない」と
厳しく取り調べられました。
そして、牢屋に留置されてしまいました。
市内(いちない)は、父がこんなひどい目にあったことを
朧(おぼろ)げながら、知っていました。
そんなことも市内が「かぢ職」を嫌う理由の
一つにもなっているのかもしれません。
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