広田峠・塚山峠

塚山峠の下を通る信越本線(長鳥駅付近)

 越路町旧塚野山村と旧北条町の境界に、広田峠と塚山峠がある。
 広田峠は北条−塚野山−小千谷を結ぶ「小千谷街道」の標高約210mのところにある。
 この小千谷街道は、「戦国時代上杉謙信が関東出征に際し、しばしば通過した軍用道といわれ、それを物語るように通過点の千谷沢付近には数個の古城跡が存在している」(「越路町の古城址」)と言われている。近世、柏崎から小千谷へ海産物など、小千谷から柏崎へ織物などが運ばれた。この道は三国街道、北国街道に接続することから主要道のひとつに数えられた。寛永18年(1641)、上田銀山(現北魚沼郡湯之谷村)の採掘が始まると、江戸までの銀輸送路として活況を呈したという。この道が関東街道とも銀山街道とも呼ばれるゆえんである。街道の宿場町である北条、塚野山は幕府の命により、常時13人12頭の人馬を用意する義務があった。重要な街道であった証である。
 しかし、明治初年に塚山峠を通る柏崎小国線が開削されたことにより(「北条町史」)、小千谷街道はかつてのにぎわいを失った。塚山峠は標高190m付近、現在のJR信越本線トンネル上にある。
 小千谷街道はすでに消滅している部分もあり、道筋すら定かではない。残った道がわずかに農道として使用されているのみである。今も広田峠には二十三夜塔やおまん茶屋の伝承などが残るが、地図にもその名を見ることは少ない。
(小千谷街道のルートの特定は「新潟県歴史の道」による。)

広田峠・塚山峠 参考文献
「新潟県歴史の道 調査報告書第6集」 新潟県教育委員会編 1994
「越路町の古城址」 山崎正治著 1980
「越路のあゆみ」 越路町教育研究会編 1973
「北条町史」 北条町史編纂委員会編 1971
「角川日本地名大辞典 新潟県」 角川日本地名大辞典編纂委員会編 1989
「新潟県の地名」 平凡社地方資料センター編 1986

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