地蔵峠

国道353号線小岩トンネル(柏崎市折居)

 柏崎大字折居(旧折居村)と高柳町大字石黒(旧石黒村)を結ぶ峠道は、黒姫山と鷲の巣山の間を越える。その代表的なものとして、地蔵峠(標高約610m)を通る道と小岩峠(標高約500m)を通る道がある。
 地蔵峠を通る道は、東頸城方面から鵜川を経て海岸に通じる重要な路線であった。この道は「塩の道」と称され(「高柳町史」)、東頸城方面からは米を、柏崎方面からは塩を運んだ。長い冬に備えるため、晩秋ともなれば、柏崎から塩を背にした人や馬の列が続いた。(「柏崎の史跡今昔」)特に麓の石黒村の人々は、こうした生活物資の運送の他、お彼岸になれば、この峠を通って北条にある菩提寺へ向かったという。峠越えが日々の暮らしと密接に関係してたのである。
 地蔵峠の頂には腰から下の病気に霊験あらたかと言われる「袈裟懸け地蔵」が祀られている。これは身代わり地蔵とも呼ばれ、信者の危機を救ったという伝承を残している。また、浜柳生なる人が次のように詠んでいる。
 「見渡せば 石黒村や高柳 折居 女谷 森の間に間に」(「柏崎文庫」)
 この峠は、眼下に広がる村々を眺め、地蔵尊を詣でるなどする休息の場所であった。また峠の道には、遭難した人々の供養や安全祈願のための石仏・石塔などが数多く残る。往来の途絶えた現在にあって、それらは、かつて多くの人の行き来があったことを静かに伝えている。
 現在、この2つの地域を結ぶ路線と言えば小岩峠を越える国道353号線である。平成4年の小岩トンネル開通は記憶に新しい。

地蔵峠 参考文献
「柏崎の史跡今昔」 前沢潤著
「高柳町史」 高柳町史編集委員会 1985
「柏崎文庫」 関甲子次郎著
「鵜川の話」 高橋義宗著 1986
「柏崎市史資料集 民俗編」 柏崎市史編さん委員会編 1986
「角川日本地名大辞典 新潟県」 角川日本地名大辞典編纂委員会編 1989
「新潟県の地名」 平凡社地方資料センター編 1986

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