父と母の説得にもかかわらず、 市内(いちない)の決意は変わりませんでした。 「家業は弟に譲(ゆず)る手段(て)もあるな」と思ったとき、 市内の心は急に楽になりました。 それから、わずかな身のまわり品をまとめ、 両親に別れを告げ、 ひとまず妙徳寺の賢深和尚のところに 向こうことにしました。 母は悲しみのあまり、目に手をあて, 流れる涙を拭きながら見送りました。 仕事場から見送った父の気持ちは どんなだったでしょうか。