竹の子の気持ちにもなる良寛(25/100)
良寛さんは子どもやお年寄りばかりでなく、一匹の虫けらや草木にも、優しかったようでした。
良寛さんは乙子(おとご)神社境内の草むした庵に住んでいた時のことでした。縁の下から竹の子が、ニョキニョキ伸びてきてついに板の隙間(すきま)から顔をだしてきました。かわいそうに思った良寛さんは、床板を切って竹の子が毎日毎日大きくなっていくのを見て楽しんだということです。


泥棒さんにも優しい良寛さん(26/100)
月がこうこうと照るある寒い晩のことでした。良寛さんがせんべい布団にくるまって寝ていると、何かガサゴソガサゴソと音がするので起きてみると泥棒でした。
あたりを見ても何もないので仕方なしに良寛さんの着ていた布団をはいで持っていきました。良寛さんは何もないこんな家に物取りに入るような泥棒はもっと気の毒な人だと思って、布団をくれてやりました。
そして一句つくりました。

  盗人にとりのこされし窓の月

また、この盗人の行き先のことをも思いやる一句もあります。

  いづこにか旅寂しつらむぬばたまの 夜半のあらしのうたて寒きに

なんという優しい良寛さんなんでしょう。


子連れ女乞食と良寛さん(27/100)
正月を迎えたある寒い日、良寛さんの住む庵に、背中に一人をおぶい、二人の子供を連れた女の物乞いがやってきました。
良寛さんは優しくその理由(わけ)をききました。しかし何もあげる物がありませんので、自分と親しくしている資産家の解良(けら)叔問(しもん)という人宛に手紙を書いて、これを持っていきなさいと言いました。

  この子らの父親は遠いところに出稼ぎにいったまま帰りません。この幼子(おさなご)を抱えていては、到底年を越せそうもありません。何かやりたいと思っても貧しい私にはどうすることもできません。どうかこの子らに何なりとも恵んでやってください。お願いいたします。
正月一日     叔問老              良寛

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