踊る良寛さん(32/100)
良寛さんもようやく地元の人となじむことができるようになりました。
ある時には道端の畔(あぜ)に腰をおろして、畑で一服(ぷく)しているお百姓さんと世間話をしたり、一寸いっぱいのお酒をご馳走になったりしたこともありました。
お盆には村の人たちと一緒になって、踊りの輪の中に入ったりもしました。

  風はきよし 月はさやけし いざともに 踊りあかさん 老いのなごりに

  君歌へわれ立ち舞はむぬばたまの 今宵の月に寝ねらるべしや

  手ぬぐいで年をかくすや盆踊り

  里べには笛や太鼓の音すなり 深山(みやま)はさはに松の音して


白牡丹につい心を奪われて(33/100)
良寛さんが、寺泊町山田のある家の庭に咲いている白い牡丹を見つけました。
その花があまり美しいので、つい一枝折って立ち去ろうとしました。
それを見つけた主人は、花の一枝くらいはやってもいいのですが、良寛さんから字を書いて貰いたいばっかりに、良寛さんが花泥棒している絵を描いて、これにふさわしい字を書いてくれと頼みました。
そこで良寛さんはしぶしぶそれに字をかきました。

  良寛が今朝のあさはな(白牡丹) もてにぐる御姿 後の世まで残るらん   良寛

剽軽(ひょうきん)な一面もあった良寛さんです。


乙子庵の生活をよんだ歌(34/100)
良寛さんは相変わらず托鉢に出かけます。
たくさんあがりがあった時、余分のものは子どもたちや困った人に分けて上げて、自分はつましい生活で満足していました。
険しい山を下って水もくみました。
山からは薪木を拾ってきては煮炊きの材料にしました。そのときの歌です。

  国上の 山の麓(ふもと)の 乙子(おとご)の 森の木下に いほりして
  朝な夕なに 岩が根の こごしき(けわしい)道に つま木(芝木)こり
  谷にくだりて 水を汲(く)み 一日一日に 日を送り
  おくりおくりて いたつき(苦労)の 身につもれども うつそみの
  人知らねば はひはひて 朽ちやしなまし 萩のねもとに

良寛さんも若い頃と違って、そろそろ水汲みや薪拾いが身にこたえるようになったころのものでしょうか。
その時の長歌です。良寛さんは肉体的にも苦労した人でした。
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