永平録を読む良寛さん(46/100)
春の夜、すでに夜もふけて、暗い闇の中で、春雨が雪とともに、庭の竹に降りそそいています。
このわびしさをなぐさめようとおもっても、そのすべもなく、ただほの暗い闇の中で、いつもの『永平録(正法眼蔵)』を開いてあれやこれや思いを巡らしています。・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・翌日、隣の老人が私の家に来て私に聞くには「この本はどうして濡れているのですか。」そのわけを言おうと思いましたけれど・・・・・・・・。
仏法が地に落ち誰もそれを真面目(まじめ)に学ぶ者がいなくなりました。
それが淋しくて涙がととめなく流れ、本を濡らしてしまいました。
だがそんなことを語り尽くしても無駄ですから、私は言いました。
「昨日からの雨がこの草庵を濡らし、そこに置いた本をぬらしてしまったんです。」と。(「良寛入門」栗田勇 祥伝社)
精根尽き果たし「ヤーメタ」と寝転ぶ良寛さん( 47/100)
良寛さんが講師になって倶舎(ぐしゃ)(迷いと悟りについて詳細)論について講義をしました。
内容は大変親切で聞き入る僧侶の尊敬の的になりました。
十日ばかり真面目に講義しましたが、途中で罷(ヤ)めてさっさと帰ってしまいました。
僧たちは後を追って再三お願いしましたが、良寛さんは「吾倦(ウ)みたり(嫌になった)」と言ったといいます。
由之(ゆうし)(良寛の弟)が新津(新潟県新津市)の桂氏に送った手紙の中にも、「例の落字、書誤りもあるけれども二度読み直すのが面倒くさいので」といって書き直しや補筆訂正はしなかったといいます。(「良寛游戯」北川省一 東京白川書院)


落ち葉を拾う(48/100)

炊くほどは 風がもてくる落葉かな

一人暮らしの良寛さんも高齢となって、薪を取りにゆくのも億劫(おっくう)になりました。
その気持ちを思いやってか、風が適当に落ち葉を集めてくれます。
有り難いことだなあ。
と良寛さんは詠んでいます。

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