春を待つ良寛さん(49/100)
雪国・越後の低い山とはいえ山の中の庵にすむ良寛さんには、待ち遠しい春はなかなかやって来ません。

春になり 日がずも未だ たたなくに 軒の氷の 解くる音して

明日からは若葉摘まむと思ひしに 昨日も今日も雪は降りけり

暦の上ではもう如月(きさらず旧暦二月)だというのに、五合庵では庭に降り積もった雪がようやく解け始めたばかりです。
まだ、里へ降りていく山道は深い雪に閉ざされていることでしょう。
そろそろ貯えも底を尽いていきました。
良寛さんは寒々とした庵に閉じこもりながら指折り数えつつ、どんなにか親しい人々にあえる日を待ち望んだことでしょう。(「良寛の道 」 平沢一郎 東京書籍)


じれる良寛さん(その1)(50/100)
楽しみにしていた花見の時期がようやくやってきました。
小船に帆をあげ、風の吹くのを待っていますが、その反面、その風で花が散るのではないかと心配で心配でたまりません。
そのじれったいこと、じれったいこと。

  はな見んといそぐこぶねにほをあげて ふけかし風のふかであれかし

じれる良寛さん(その2)(51/100)
寒い夜、うすっぺらなせんべい布団にくるまって寝ていましたが、寒さが身にしみて寝るに眠れず、起き上がって筆をとりました。
しかし、恨みごとだの悲しいことなどがいろいろと思いだされて、どれから先に手をつけたらいいのか、筆の動きも鈍(にぶ)りがちです。
そのじれったいこと、じれったいこと。

  夜や寒き 衣や薄き 独寝(ヒトリネ)の 夢も破りてうっとりと 一筆染めて顔をあげて 昨日は恨み今日はまた 悲しゆかしきとりどり(色々)の 何から先へああしむき(じれったい)

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