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語り継ごう柏崎の知恵ぶくろ (2)
柏崎に伝わる「昔話・伝説」が今や忘れ去られようとしています。おじいさんおばあさん、両親から子へ孫へ、 そのまた次の代へと語り継いでいきたいお話です。 祖先の温かい思いが伝わってくるように思います
越後の国守、上杉房能は、長尾為景の軍
に松之山で取り囲まれてしまった。
房能は奥方を呼んで「こう囲まれては、もう
逃げることはできぬ。わしはここで切腹する
がお前は逃げなさい。お前は女だから、敵は
見のがしてくれるだろう。」
奥方は房能と別れ、昼は林の中や、山陰にか
くれ、夜になって歩いた。
幾山も登り、峠を越えて、女谷の村に着いた
時は、一足も歩けないほと疲れていた。
村人は気の毒に思って
「わしらが面倒みてや
るから、ここで暮らしなせえや。」と親切に
言った。
奥方は、あや子と言った。
村人は、あや子の家をたててやり、食べ物を
持っていってやった。
あやこは、歌も踊りも、上手だった。
これを知って、村人は、祝いごとがあると、
「歌をきかせてくだされ。」「踊ってくださ
れ。」と頼んだ。あや子は、いつも快く踊っ
て見せてくれた。そのうちに村人が「おらも
踊りを習おうじゃないか」ということになった。
あや子は村人に踊りを教えることにした。
冬になると、女谷の村は雪ですっぽり埋まり、
鉛色の雪空がその上に重く垂れさがっていた。
しかし、あや子の家からは、毎日、毎日笛の
音、鼓の音がにぎやかに聞こえ、踊り子のか
ぶった赤いユライが金魚の泳ぐように華やかに
見えた。
エイッ ホウ エイッ ホウ
というかけ声は、
冬のうっとうしさをふきとばした。
やがて、眠っていた谷川がチョロチョロと音を
出して流れ出した。
「さあ、春だ」「お祭りだ」村人は、黒姫神社
に集まり、「今年も豊作でありますように」
と、神様にいろいろな物をお供えして、お願い
をした。
あや子から習った踊りも踊った。
「なんという舞だ」と村人に尋ねられ、村人は
「あや子の舞さ。」と答えた。
それから、この踊りを「あや子舞」というよう
になった。
以上 柏崎市老人クラブ連合会 編集・発行 「語り継ごう柏崎の知恵ぶくろ」2003/7/31より <<前頁へ | 次頁へ>>
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2006/4/18 UP 作成: NET・陽だまり